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不識、喫茶去

日本画と文化について

NHK「第2回 江戸あばんぎゃるど」私的まとめ-その1

2026年1月11日

※この記事は2019年2月にブログに上げた記事の書き直しです。

2019年2月に放送されたNHKの「第2回 江戸あばんぎゃるど — ガラスを脱いだ日本美術」の私的まとめです。第1回の「アメリカ人が愛した日本美術」の私的まとめの続きです。

第2回「 ガラスを脱いだ日本美術」では、タイトルどおり、ガラス越しではなくリビングや和室で目の前においた作品を、一日の時間の経過の中で鑑賞すること、その価値を見いだすのが番組の主題だった。私は、ディレクターであるホークランド氏がニューヨークの コレクターであるウェバー氏のリビングで土佐光起の「吉野桜図」を見た瞬間が、その主題のきっかけとなったのではないかと勝手に想像したりした。

というのも、実際、「吉野桜図」をカメラ・ドリーを使ってパンする映像は、番組で何度も挿入され、私にもその映像は部分的に浮き出して見えてスゴイと思ったからだ。でも一方で、見ているのはテレビ画面という二次元の映像なのだから、これは実際にそこに居て見るのとはまた別の3Dの感動ということで…ホークランド氏は映像作家としてむしろそこに面白味を見いだしたのかとも…などとも思えたのだ。

さて、前回の番組の第1回は、主にアメリカの美術館に貢献したアメリカ人たちの話だったが、第2回の今回は個人コレクターと美術商がフォーカスされた。まさにガラス越しでないリビングで日本美術を楽しむアメリカ人たちだ。

  • ジョン・C・ウェバー (個人コレクター)
  • レイトン・ロンギ (美術商)
  • アレクシー・ショール(個人コレクター)

ジョン・C・ウェバー

私は単なる趣味の人なので評価はよくわからないが、番組で紹介されていた氏の土佐光起の「吉野桜図」も「 源氏物語屏風」はいずれもとんでもなく素晴らしいと思った。また 山崎如流、 甫雪等禅、 金渓道人といった名前は全てはじめて知った。

そんな中、氏の所有する「鯉」と題する円山応挙の絵が紹介されていた。鯉が滝をまっすぐに登る姿が描かれ、それも滝の水の線に隠れて縦のストライプのように鯉が垣間見えている面白い絵である。

番組のテロップにはタイトルが「鯉」と表示されている。しかし、これは実際には「龍門鯉魚図」または「龍門図」と呼ばれるものではないだろうか?もしそうなら二幅または三幅で構成されるはずで、これとセットになっている絵もどこかにあることになる。といっても、それは単なる私の憶測で、憶測の理由はこうである。

応挙の「龍門図」は、同じ題材のものを日本では大乗寺と京都国立博物館が持っていて、それぞれ展示されていたのを見たことがあるのだ。

ひとつは2013年に愛知県立美術館で行われた「應挙」展で、ここでは大乗寺所蔵の「龍門鯉魚図」が展示されていた。これは二幅で構成され、ウェバー氏の「鯉」と同じく滝の流れの中に垣間見える鯉の図を右幅にして、一方別の左幅には静かな水中に泳ぐ鯉を水平的に描いているものだった。

2013年愛知県美術館「應挙」展チラシと超しぶい表紙の同図録
2013年愛知県美術館「應挙」展チラシと超しぶい表紙の同図録

もうひとつは、2016年の根津美術館での「円山応挙」展での、京都国立博物館所蔵の「龍門図」の展示である。こちらは三幅で構成されていて、中幅が滝登りの図で、左右幅は両幅ともにやはり穏やかな水を泳ぐ鯉が描かれている。面白いのは、この展覧会の図録の解説に書かれているのだが、この右幅の鯉は、大乗寺の左幅の鯉と同じ絵柄の鯉であるということ。左右反転しているものの、同じ下絵を使っていると解説にはある。この二つの図録を持っているなら較べてみると面白いと思う。

2016年根津美術館「円山応挙」展のチラシと図録
2016年根津美術館「円山応挙」展のチラシと図録
2016年根津美術館の出品リストは図入りでお得感あり。左下に「龍門図」中幅の図
2016年根津美術館の出品リストは図入りでお得感あり。左下に「龍門図」中幅の図

インターネットで調べると、2015年にMIHO MUSIUMでジョン・C・ウェバー氏のコレクション展が行われたらしい。残念ながら、関心の外だったのか隣の県なのに見に行っていない。再度、氏のコレクション展が日本で企画されることを期待したい。その時は是非とも「吉野桜図」を公開していただきたいと願う。

続く