不識、喫茶去
日本画と文化について
NHK「江戸あばんぎゃるど(前編)」私的まとめ -その1
※この記事は2019年1月にブログに上げた記事の書き直しです。
2019年1月に放送されたNHKの「第1回 江戸あばんぎゃるど」の私的まとめです。何回かに分けてアップします。
番組では戦前戦後のアメリカ人の日本美術コレクター6人が紹介されていました。以下の6人でした。
- リチャード・フラー
- チャールズ・フリーア
- エイブリー・ブランデージ
- シャーマン・リー
- ハリー・パッカード
- メアリー・グリッグス・バーグ
若冲コレクションで有名なジョー・プライスやカート・ギッターといった個人収集家ではなくアメリカの美術館所蔵品に貢献した人たちを中心に紹介、ということでしょうか。
1. リチャード・フラー
番組では触れられていなかったが、フラーの日本美術収集のきっかけには、以下のような有名な話がある。1919年にフラー一家はアジア旅行への途上、日本の日光に立ち寄った。ここでリチャードが虫垂炎になってしまい、いくつかの理由で旅館の中で手術を行った。ところが、麻酔か何かの薬が腐って(?)いて病状は悪化し、家族共々3ヶ月間日光で過ごすことになった。その間に、一家は日本の工芸品などを収集し、日本美術をよく知ることになった。
シアトル美術館は1933年設立なので、これはそれ以前の話ということになる。
日本ではシアトル美術館の所蔵品展は2009年に巡回して行われている。僕はサントリー美術館と神戸市博物館に見に行っているのだが、サントリー美術館で始めて「鹿下絵和歌巻」を見て、その美しさ(修繕の美しさを含め)と躍動感にとても感動したことを覚えている。

「鹿下絵和歌巻」といえば、当時はシアトル美術館のWebサイトで、全図スクロールして見ることができた。これは、マイクロソフト社の教育チームの無償協力によるものらしく、それも当時の館長がゲイツと姻戚関係があったためらしい。残念ながら、今はリンクが切れているようだ。もっとも「鹿下絵和歌巻」は、むしろ後に登場するシャーマン・リーが購入をすすめた。その逸話が番組で紹介されていて( フレデリック夫人の話)興味深かった。

番組では「烏図屏風」が印象的な効果音(烏がうごめくようなカサカサとした音)をともなって紹介されていた。上記の展覧会の図録には河合政朝氏(美術史)の「烏図屏風」に関する論文が掲載されていて興味深い。烏の「飛鳴宿食(ひみょうしゅくしき)」4つの姿態を描くことは長谷川等伯も語っていて、おそらく室町時代以来の形式だということや、醍醐寺の烏図屏風が狩野派と推察されることから、これも狩野派である可能性があるなど論じられている。
また、論文の注釈にはこの烏図屏風は1936年10月に山中商会から購入されたとある。シャーマン・リーが副館長としてかかわったのは1948年なので、多分、購入をしたのはフラー自身であったということになるのだろうか。
2. チャールズ・フリーア
番組でも紹介されていたように米国スミソニアン協会のアジア美術の美術館であるフリーア美術館のコレクションは、フリーアの遺言により門外不出とのこと。つまり、コレクションの日本での展示はまったく期待できない。俵屋宗達の「雑木林図屏風」は是非とも実物を見てみたいものだが、それには何かの機会に展示がアナウンスされたときにワシントンD.C.まで行くしかないわけだ。
だが、ご存じのようにフリーア美術館のウェブサイトでは、作品を検索してかなり細かいところまで拡大して見ることができるサービスを提供している。Open F|S | Collections と名付けられたこのシステムは2015年1月1日に公開された画期的なもの。
俵屋宗達や尾形光琳などは「宗達」「光琳」などと漢字でも検索できるし.jpg画像でダウンロードするボタンまで用意されている。


残念ながらまだ宗達の「雑木林図屏風」は公開されていない。新たな収集コレクションも定期的に追加される予定とのことなので期待したい。
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